牡丹と岡本かの子

5月の始め頃に大輪の花を咲かせる牡丹。紅、淡紅、黄色、白など色も様々、花弁を何層にも重ねて咲く様は重厚かつ華やかで、高貴な佇まいは花王の名にふさわしいものです。和名では深見草(ふかみぐさ)とも呼ばれています。

大正、昭和期に生きた小説家・岡本かの子。画家・岡本太郎の母でもある彼女は、牡丹をこよなく愛した女性の一人です。愛情がとても深く繊細であった岡本かの子は、自身の心に蓋をせず、むしろ体当たりするような激しく情熱的な人生を歩みます。夫(岡本一平)と息子(岡本太郎)と若い愛人との4人での同居生活、その後も次々と現れる恋人達。恋を謳歌するような人生を送りました。

自分の心を真っ直ぐに見つめ、世間の評判をかなぐり捨てて生き様を貫いた彼女は、牡丹の歌を残しています。

風もなきにざつくりと牡丹くづれたり
ざつくりくづるる時の来りて

岡本かの子

死の瞬間まで咲き誇り、ざっくりと崩れ落ちる。そのように「生ききった」と言わしめるような人生を送れているか——。岡本かの子に問われているような気がします。

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