万能薬か不吉な植物か
枇杷(びわ)は冬に花を咲かせ、夏の初めにオレンジ色の実をつけます。実の形が楽器の琵琶に似ていることから「びわ」と名付けられました。
さて、この枇杷の木ですが、家の近くに植えると縁起が悪いとされているのをご存知でしょうか。庭に枇杷を植えると家人が病気になる、死人が出る、などとまことしやかに言われています。
枇杷が日本でフルーツとして普及しだしたのは、江戸時代中頃から。それ以前の枇杷は、薬として注目されていました。
仏教の経典では、枇杷は「大薬王樹」という名で「衆生の一切の諸病を滅す」と記されています。枇杷は薬の王様と称されるほど万能な薬効があると言われていたのです。
一説によると、仏教信者を集めるための「客寄せ」として枇杷の薬を利用していたことから、枇杷の薬効が一般に知られないように、あえて不吉な噂を流したと言われています。
またある説では、枇杷を庭に植えると、万能薬である枇杷を求めて病人が家に押し寄せることから、病人を招く樹、転じて庭に植えると病人が出る、という話になったとも言われています。
いずれにせよ、医療技術が充実していなかった昔は、枇杷がとても重宝されていたことがうかがえます。
夏のフルーツとして親しまれている枇杷ですが、現代でも枇杷の葉療法や枇杷エキスが民間治療として根強く残っているところを見ると、薬としての枇杷の役目もまだまだ続きそうです。