連載– category –
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冬の月
澄み切った夜空に輝く冬の月は、寒さという気候が影響するのか、美しさの中に冷たさや厳しさ、凄惨さが感じられるような気がします。 清少納言は「冬はつとめて」と冬の朝の美しさを絶賛しています。彼女の性格的に、冬は陰気臭い夜よりも朝の方が輝いて見... -
枯野に咲く花
草や木は枯れ虫も消え、荒涼とした冬の野を「枯野」と言います。蕭条たる景色はまた、小さな命を際立たせます。 霜さゆるあしたの原の冬枯れて一花咲ける大和なでしこ藤原定家 -
進化するエモい
上村松園/月下佳人 「エモい」という言葉が市民権を獲得して随分経ちました。エモいは「emotional(エモーショナル)」を語源としています。感情を動かされた、感動した、ノスタルジック、しみじみとした、寂しい、ヤバい、悲しい、など様々な感情を複合的... -
酒造り始まる
北風が木の葉を払い落とし、山々が静かに冬を迎えようとする十二月上旬、壺坂酒造は酒造りに追われていた。 酒蔵の朝は早い。大型の蒸し器である甑を使って酒米を蒸す作業から一日は始まる。もうもうとした熱気が辺りに充満し、蒸し上がる米の香りが古い蔵... -
猫の一句
猫は寒さが苦手な動物。冬になると少しでも温かい場所を見つけては丸くなっています。 今ではコタツやストーブの前、ホットカーペット等が冬猫達の定位置ですが、昔は竈(かまど)の中が人気スポットだったそうです。火を落とした後のまだ温かい竈の中に潜... -
木を守っているのは
実りの秋が終わり冬を迎えると、果実のなる木の高いところに一つだけぽつんと実が残っていることがあります。柿や柚子などの柑橘系の果樹に見られます。 これは、来年もたくさん実をつけるように、というおまじないの意味があるとか、小鳥の分を残しておく... -
時雨の“時”
時雨(しぐれ)とは、山に強い北風が吹きつけることで雨を降らせた残りの水蒸気が、山を超えてやってくる時に降る雨のこと。秋の終わりから冬の始めに見られる現象です。 時雨は単に気象を表しているだけでなく、人生の無常観やはかなさといった情感を含みま... -
落ち葉
秋の終わりから冬にかけて、落葉樹は全ての葉を落としてしまいます。「落ち葉」は冬の季語です。はらはらと散る落ち葉、散り落ちた葉が一面敷き詰められている様子、水面に浮かぶ枯葉など、古来から様々な「落ち葉」が和歌に詠まれてきました。 式子内親王... -
時間の向こうの空間
十月末から生垣の山茶花がひらきはじめた。うすい桃色と白の二種類で、いやみがない。数日咲いてから声もなく散って行く。散ったあとを眺めて、あわれだと思う。人間に情念があるように花にもそれがあるのか、(中略)動物と植物のちがいがあるにせよ、生... -
自然を守った男
https://youtu.be/LiKDili6-Ig 登場人物紹介 木の葉がすっかり赤く染まり、冷たい風が山から吹き下り始めた。山本弘と播磨日本酒プロジェクトのスタッフは、登山道整理と釉薬の材料採取のため、11月30日に雪彦山へ行く予定を立てていた。 30日の早朝、山本...