進化するエモい

上村松園/月下佳人

「エモい」という言葉が市民権を獲得して随分経ちました。エモいは「emotional(エモーショナル)」を語源としています。感情を動かされた、感動した、ノスタルジック、しみじみとした、寂しい、ヤバい、悲しい、など様々な感情を複合的に、または微妙に含んだ時に使う言葉です。2000年代に現れてからsnsを中心に徐々に浸透してきました。

上に記したように「エモい」にはなかなか微妙な感情が含まれています。これまで使われてきた「感動した」「懐かしい」「さみしい、悲しい」だけでは表現しきれない、何ともいえない情緒。それをうまく表す言葉が現代には無かったため、生み出された言葉です。

しかしながら、昔の日本には「エモい」と同じような言葉が存在しました。「あはれ」です。紫式部や清少納言がもののあはれ、いとあはれ、とか言っていたアレです。

「ちはやふる」という漫画やアニメが人気となって、百人一首が子ども達の間で流行したように、近年は10代〜20代の若い人の方が、人の心の機微や感情の揺れのようなものに敏感なのかもしれません。

繊細な感情表現をする言葉が現代に無いということで、若人が「エモい」を新しく創ってくれました。ありがたいことです。清少納言や紀貫之も子孫達の活躍に喜んでいるかもしれません。

最近は「いとあはれ」に似た「さすい」もよく使われています。生き物のように進化し続ける日本語、その根底には古代から連綿として受け継がれている日本ならではの「何か」があるのだと思います。

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