【10/16】肉と魚介と稲刈りと

この日は朝から田んぼにお客さんがやってきていた。

「素人達の米作り」主催者である原田はビーグル犬を飼っている。名前はランコ(♀)。土作りの時からずっと米作りのサポート(?)をしてくれていたのだが、彼女の友達のビーグル犬・ディーノ(♂)がやってきたのだ。ディーノの飼い主である山下さん家族は、お土産にと広島県竹原のブランド牛である『峠下牛』を持ってきてくれた。

実はこの日の早朝、原田は米作りの相方である中下さんの職場(魚市場)で鮭を仕入れていた。また、その中下さんは仕事を終えて、サザエを持って田んぼにやってきていたのである。

ブランド牛にサザエに鮭。山奥の田舎に豪華な食材が揃い、目を輝かせる一同。早速、牛肉と鮭のバーベキューが始まった。

しかしながら、今回はランチを食べに田んぼに集まったのではない。目的は稲刈りである。
この日は、村の人がコンバインで稲刈りを手伝ってくれることになっていた。素人米作りのメンバーは、コンバインが雑草を巻き込んで壊れることがないよう、鎌で草刈りをしながらコンバイン稲刈りのサポートをするのだ。

ディーノの飼い主である山下さん家族は、稲刈りが初体験である。記念すべき初めての稲刈り。それがこんな草だらけの田んぼで申し訳ない気持ちになる原田。農家にも「こんな雑草だらけの田んぼ見たことがない!」と言わしめるほどの圧倒的な茂りっぷりである。

皆で草刈りをしていると、中下さんの娘が友達を連れてやってきた。
20代半ばの彼らはさぞや戦力になるだろうと期待されたが、彼らは作業途中でなぜか稲藁を束ねだし、縄作りに熱中しだした。縄が完成すると、どこかへ遊びに行ってしまった。

令和の若人は自由である。

そんな娘を見る母(中下さん)の「うちの娘……(呆然)」と言わんばかりの後ろ姿に哀愁が漂う。大丈夫、そうやって親子は共に成長していくのだ。

作業も終盤になる頃、中下さんがサザエを焼いて皆に配って回った。その美味しいこと!絶妙な焼き加減に皆の顔もほころぶ。

田んぼの最後の一画を刈り終わったところで、雨がパラパラと降り出した。なんとか終わってやれやれと肩をなで下ろす一同。残す稲刈りは後、田んぼ一枚分である。

(続く)

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