【10/31】新米を食べるモンスター!
10月31日、「素人達の米作り」のメンバー達は、メンバーの一員である木原リフォームさんのビルに集まっていた。この日は、ビルの一室を借りて皆で育てた新米を食べるのだ。
米作りの主催者であるPR,JAPAN代表の原田は、顔を青くしてやってきていた。体調や心理的不良から青ざめているのではない。文字通り、顔面全体を青くペインティングしていたのだ。
この日は10月31日、ハロウィンである。参加メンバー達の都合がいい日を選んだ結果たまたま開催日が31日になったため、ハロウィンに便乗して仮装で集合しようということになったのだ。ちなみに、仮装の提案者は素人米作りの重鎮・中下さんである。
新米も、ただ炊き上げて食べるのではない。鯖寿司にするのだ。なぜ鯖寿司なのかというと、主催者の原田が無類の鯖寿司好きだからである。
鯖、ハロウィン、仮装、新米……。出だしからカオス感を漂わせながら「素人達の新米を味わう会」は始まったのであった。
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木原リフォームのビルに到着した原田がまず初めにしたことは、木原リフォームの奥様・村上利恵さんの顔を白く塗ることだった。
利恵さんは淑やかな佇まいの上品なマダムだ。この日は娘さん達と一緒に、女性らしいハロウィンメイクにかわいらしいコスチュームで、ハロウィンパーティーを盛り上げる素敵な装いをしていた。だが、真っ青に塗りたくった原田の顔面を見たことで、マダムの心に不要なスイッチがパチリと入ってしまった。
「やる時はとことんやりましょう!」
上品ながら男まさりの芯の強さを秘めた利恵さん。原田は必然的に、マダム利恵のメイクをすることになった。
「KISSみたいにしましょう」
にこやかにメイクの希望を原田に伝える利恵さん。原田が知っているKISSは一つしかない。(アレだろうか……) とまどう原田に、マダムは追い討ちをかける。
「目のところに黒い★が塗ってある、アレで」
(あぁ、やっぱりあのKISSだ!)
原田の手により、マダムはKISSへと変貌していった。
ちなみに、素人米作りの重鎮であり仮装提案者である中下さんは、魚市場に勤めている。最近はマグロ解体ショーで疲れており、こちらは本当にやつれた青い顔でやってきていたのだが、原田によって顔面黄色のヒョウ柄に塗りたくられてしまった。魚なら何でも捌く、女豹の誕生である。
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そんなこんなで、悪い病気でも伝染するかのように参加者達に次々と仮装スイッチが入ってしまい、鯖寿司を作る前にモンスター軍団が誕生してしまった。
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本気で仮装を楽しむ大人達を見て、一緒に参加していた子ども達も大喜び。自分も仮装をすると言い出し、順番に小さいモンスターに変身していった。
この日は鯖寿司を作るにあたり、料理講師として広島市中区紙屋町にある「喜多よし」の若き料理長・今井氏(30代前半)を招待していた。今井氏には仮装のことを伝えていなかったため、彼は普通の格好でやってきていた。
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離れた所で一人、料理の段取りをしていた今井氏。準備がひと段落して皆の元にやってきた彼の目に飛び込んできたのは、色とりどりのモンスター達であった。驚く今井氏。けれども今さら逃げることはできない。青や黒や黄色の陽気な妖怪達に囲まれた今井料理長の白衣は、弱々しく光って見えた。
賑やかな妖怪達に鯖寿司の作り方を教えながら、今井料理長は思った。
(鯖寿司が完成したら、寿司と一緒に僕も喰われるかもしれない……!)
さて、肝心の新米である。農業のことも米のことも何もかもわからないまま試行錯誤で素人が作った米だ。雑草だらけの中でなんとか育った新米は、そもそも食べ物として大丈夫なのだろうか。原田は、寿司にする前の炊きたてのご飯を少し取り分けて、恐る恐る食べてみた。
「ちゃんと米になってる!」
ほんのり甘みも感じられる。期待をしていなかった分、想像以上に「米」の味がしたため、原田は驚くとともに安心もした。
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この日、素人米作りのメンバー達は今井氏の指導の元、新米8キロを使って鯖寿司100本を完成させた。テーブルには寿司の他にも美味しそうな料理の数々が並び、お酒やジュースも用意されていた。米作りメンバー達は、大人も子どもも大笑いしながら新米の会を心ゆくまで楽しんだのであった。
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会が終わると、仕事の都合で参加できなかったメンバーのところへ、モンスター達は鯖寿司を配って回った。突然の妖怪の訪問に心臓が止まるほど驚きながらも、参加できなかったメンバー達は嬉しそうに鯖寿司を受け取っていた。
大人も子どもも全力で楽しんだ一日であった。
さて、朝から妖怪達に翻弄され続けていた料理長の今井氏。彼は妖怪達に「シラフじゃやっていられないだろう」と妙な気遣いをされて、朝からビールを呑まされていた。今井氏は鯖寿司配りにも同行していたのだが、時が経つにつれて彼の動きは超スローになっていった。最後の訪問地であった「焼肉かのん(ここの店主夫婦も米作りメンバーである)」の店内で、彼は一息つくやいなや虚ろな目で言い放った。
「こんな面白い会はない!」
そして、静かに倒れたのであった。
鯖寿司を指導しながら、よく呑んだ(呑まされた)今井料理長、おつかれさまでした。そしてありがとうございました。
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(次回「籾摺り」へ続く)
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