【歴史コラム】伝説の百姓
江戸時代、圧政に堪え兼ねた百姓が反旗を翻す「百姓一揆」が全国各地で発生していた。兵庫県も例外ではなく124件あったようだが、そのうちの半数近い56件が播磨で起こってい た。普段は大らかでのんびりとしているが、いざとなれば血気盛ん、権力に簡単に屈しない反骨精神バリバリの播磨人である。なかでも歴史に残る百姓一揆が寛延二年(1749年)の姫路全藩一揆である。
庄屋が60戸打ち壊され、逮捕者は345人、兵庫県最大規模の一揆と言われている。そんな伝説の一揆を仕切った百姓の名が「なめら甚兵衛」。一筋縄ではいかない播磨の荒くれ百姓集団を一手に仕切り、軍隊さながらの鮮やかな戦法を見せたという甚兵衛は、夢前町古知之庄(こちのしょう)の一介の農民であった。古知之庄は飯塚の田んぼがある地域である。
穏やかでのんびりとした夢前町であるが、農家が命を賭けて権力に対抗した時代もあった。先代の命がけの取り組みがあって今の夢前がある。現代の私たちは遠い先祖の生き様を知ることで、滾るような生きる力を思い出すことがあるのかもしれない。