蛸壺を引き上げて
夏の間、蛸(たこ)漁が盛んに行われた淡路島の五色浜であるが、季節の移り変わりとともに、次の漁への準備が始まる。
鳥飼漁港の大橋水産では蛸壺を使った蛸漁をしており、お盆を過ぎたあたりから海底に沈めた蛸壺を少しずつ浜へ引き上げていく。9月中頃までに全ての蛸壺を引き上げて蛸漁は終了となる。大橋水産が海底に沈めている蛸壺は約4000個。毎日少しずつ引き上げては浜できれいに掃除をするのだ。
一夏の間、海の底で過ごした蛸壺はカキがびっしりとこびりついている。壺に付いたカキや汚れを一つ一つ丁寧に取り去りきれいに洗っていくのだが、8月から9月にかけてまだまだ日差しはきつく気温も高い。大変な作業である。
蛸は産卵をするために狭い所に潜り込む習性がある。その習性を利用したのが蛸壺漁であるが、引き上げた蛸壺の中には蛸の卵が産み付けられていることがある。市場には出回らない浜の珍味だ。お刺身のように生で食べると美味しいのだという。漁師だけが知っている夏の終わりのご馳走である。
いよいよ秋。蛸漁が終わって一息つくひまもなく、大橋水産では海苔の養殖が始まる。
撮影:大橋水産