本居宣長の桜

神坂雪佳/吉野

本居宣長は平安時代の国学者です。当時難解すぎて誰も読み解けなかった古事記の解読に何十年も取り組み、古事記を世に出した人です。

江戸時代は幕府の後押しもあって、漢学(中国の古典)が発達した時代でした。多くの優秀な漢学者が生まれ、本居宣長もその一人でした。

しかしながら、漢学を深く追求するうちに浮かび上がってきたのは、日本の素晴らしさでした。外国と比較することで、漢学者達が国学へ原点回帰をした時代でもあったのです。

本居宣長は、難解な古事記と向きあうために、古代人の心を理解しようと努めました。その一環として始めたのが、古代の言葉を使って和歌を詠むことでした。古代人になったつもりで和歌を詠み、古代から連綿と続く日本人の芯にある心を理解しようとしたのです。

日本人の根幹を追求した国学のスペシャリストである宣長が、日本人の心=大和心について詠んだ和歌が残されています。

敷島の大和心を人問はば
朝日に匂ふ山桜花

訳)大和心がどのようなものかと問われたら、朝日に照らされ辺り一面を美しく染める山桜のようだと言おう。

宣長もまた、桜を愛した人でした。

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