からかわ
「からかわ」は兵庫県の山椒を使った郷土料理です。通常、山椒は実や若葉を使いますが「からかわ」は山椒の木の皮を使います。まだ寒い早春の頃、山椒の木の皮をはいで細く切り、茹でてあく抜きをしてから佃煮にします。
恐るべきはその味。ほんの少し口にしただけで舌がビリビリと痺れ、その痺れがいつまでも口に残り続けるという凄まじい辛味が特徴。いったい誰が好んで食べたのか?と首をかしげたくなるような強烈な刺激ですが、これは好みの問題。今でも地元で愛されている珍味なのです。しかしながらこの凄まじい辛味のおかげで、白ご飯は何杯でも進みそうです。
一説によると、木の皮を食べる習慣がある土地はよほど貧しい暮らしを強いられた地域である、とも言われています。昔は植物の木の根、蔓、皮、新芽、花、実、あらゆるものが食用となっていました。
秋のお彼岸の頃に咲く赤い彼岸花(ヒガンバナ)。この根には毒がありますが、飢饉など最悪の事態が訪れた時の救荒作物でした。毒とわかっていてもどうにかして食べて生きなければいけない時代に「からかわ」の凄まじい辛さは何でもなかったのかもしれません。昔から地域に伝わる郷土料理は、先人の生き様も教えてくれます。