美しい光沢と滑らかな質感の絹(シルク)は、古来より高級衣料素材として重宝されてきました。絹は蚕(カイコガの幼虫)が作る繭から取り出す生糸を織って作られます。現代では化学繊維の普及により、絹の需要は減少していますが、上品な絹の肌触りは今も昔も愛されています。

養蚕の歴史は古く、日本には稲作とともにその技術が伝えられたといわれています。5〜6世紀頃には、朝鮮半島からの渡来人である秦氏が絹織物の技術を伝え、宮廷貴族の衣装を中心に発展していきます。

昔の人にとって絹は身近なものでした。農家にとっては養蚕が貴重な収入源となり、貴族や武家にとっては高価な衣装であり、権力の象徴でもあったのです。養蚕のシーズンは5月から10月頃で「繭」は初夏の季語にもなっています。

たらちねの母が養(か)ふ蚕(こ)の繭籠り
籠れる妹を見むよしもがも


(柿本人麻呂歌集/万葉集より)

母が飼育している繭の中の蚕のように家に籠もってしまっているあの人を見るすべはないものか

恋の歌にも詠まれる蚕の繭。万葉の時代から人の暮らしに寄り添っていました。

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