送り火

ご先祖を供養する「お盆」の時期は土地土地によって異なりますが、8月13日に先祖霊をお迎えをして、8月15、16日に送り出す地域が多いと思います。
今日16日は先祖霊をあの世へ送り出す日。夕暮れ時に家の前で火を焚き、霊の帰り道を明るく照らす「送り火」の風習が今でもあちこちに見られます。大文字で知られる京都五山の送り火もその一つです。

子供の頃、出雲の山奥にある祖父母の家で、夏休みを過ごしたことがありました。お盆最後の日の夕方、蝋燭と線香を持って送り火をした日のことを鮮明に覚えています。
家の前を流れる小川の側で線香に火をつけます。かなかなと鳴くヒグラシの声、だんだんと日が暮れていく夏の景色の中、線香の細い煙が藍色の空にゆっくり上がっていくのをただ見ていたこと。
全てが夢のようにぼんやりとしていた夕暮れの日、あの世とこの世は繋がっていると、理屈抜きに肌で納得するのに十分なものが送り火にはありました。

お盆やお彼岸など日常に溶け込んでいた風習は、先祖を敬う気持ちを自然と育んでいたのではないでしょうか。わずかな草木しかない一面コンクリートの街の中、仏壇もお墓もない環境で育った私が幼い頃に一度だけ体験した送り火の思い出は、ご先祖を思い出す数少ない手がかりの一つとなって、心を照らしてくれています。

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