引越し大名

明治元年10月13日、明治天皇が京都御所から江戸城(現在の皇居)に入城されたことを記念して、10月13日は引越しの日と定められました。

江戸時代、引越しばかりをしていた大名がいました。松平直矩。徳川家康のひ孫であり、先日のカミングアウトデーで紹介した「美少年を好む大名」その人でもあります。

お上の命により家督を継いだ5歳の頃から移動を余儀なくされ、大名となってから5度も国替えをしています。
大名の引越しは大掛かりなもので、家来全員引き連れて城ごと引っ越すような一大イベント。当然引越し費用は莫大なものとなります。引越す度に借金が増え、財政は圧迫されました。兵庫県姫路市の郷土資料によると、姫路藩主であった頃の直矩は民に増税を課していて、あまり人気のある大名ではなかったような印象です。

あまりにも国替えが多かったため「引越し大名」という気の毒ながらもにくめないようなあだ名をつけられてしまいます。

直矩は何か特別な偉業を成し遂げた人ではありませんが、一つだけ大変な資料を今日に残してくれています。17歳から亡くなる54歳まで行事や私生活のことを書き綴った「松平大和守日記」です。芸能好きであった直矩が当時の観劇の様子を日記に記しており、それが今日、演劇研究の貴重な資料として重宝されているのです。

美少年好き、芸能好き、時には鷹狩りを楽しんで。引越しで大変な目に合い莫大な借金を背負いながらも「引越し大名」はなかなか人生を楽しんでいたようです。

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