時雨の“時”
時雨(しぐれ)とは、山に強い北風が吹きつけることで雨を降らせた残りの水蒸気が、山を超えてやってくる時に降る雨のこと。秋の終わりから冬の始めに見られる現象です。
時雨は単に気象を表しているだけでなく、人生の無常観やはかなさといった情感を含みます。もうすぐ厳しい寒さがやってくる、それを予感させるような冷たい雨が、そのような心境にさせるのかもしれません。
世にふるもさらに時雨の宿りかな
宗祇
訳)時雨どきの雨宿りは侘しいものだけれど、人生も同じようなものかもしれない。時には冷たい雨が降り続けることもある。
冬の冷たい雨も、暖かい春の日差しも、どちらも自分の内にあるもの。時雨を受け入れる度量があれば、自分の“時”もまた、深みと厚みをもって豊かになっていくのかもしれません。