冬の月

澄み切った夜空に輝く冬の月は、寒さという気候が影響するのか、美しさの中に冷たさや厳しさ、凄惨さが感じられるような気がします。

清少納言は「冬はつとめて」と冬の朝の美しさを絶賛しています。彼女の性格的に、冬は陰気臭い夜よりも朝の方が輝いて見えたのでしょうか。

その反対に、紫式部は源氏物語の中で、光源氏に冬の月の素晴らしさを語らせています。

花紅葉の盛りよりも、冬の夜の澄める月に、雪の光りあひたる空こそ、あやしう色なきものの身にしみて、この世の外のことまで思ひ流され、おもしろさもあはれさも残らぬ折なれ。すさまじき例に言ひ置きけむ人の心浅さよ。

源氏物語「朝顔」より

訳)花や紅葉の盛りの頃よりも、冬の夜の冴え渡る月の光に雪が輝いている様が神秘的で美しい。この世ならぬことまで心に浮かぶようで何ともいえない。冬の月をつまらない、という人の心の浅さよ。

最後の「心浅さ」に若干の毒気があるものの、冬の夜の何ともいえない神秘的な美しさを教えてくれる一文です。日本画の大家・東山魁夷の「月光」や「冬華」にも通じるような、冬の月の見え方です。

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