荻の声、秋の声
荻(おぎ)はイネ科の植物で、穂を風になびかせる様子はススキによく似ています。荻の特徴は水辺に育つことと、穂が白いこと。穂が風にそよぐ音は秋を知らせるといわれ、「荻の声」と呼ばれています。
「をぐ」には神や霊魂を招くという意味があり、荻が風にそよぐ「そよ」「そそや」という音は神のお告げを示すともいわれています。荻には神がかった何かがあるようです。秋風にそよぐ荻の声に、昔の人は何を聞いたのでしょうか。
現代は車や電車、電子音など人工的な音がありすぎて、自然の音がとてもわかりにくくなっています。都会にいてはなおさらのこと。荻もススキも見かけることはほとんどありません。
けれども、公園の木々や草、ビルの合間に吹くちょっとした風にも、秋ならではの音がわずかに含まれています。いつもの通勤通学の道すがら、耳をすますと「秋の声」が聞こえてくるかもしれません。