熨斗に込められたおもてなしの心
お歳暮などの贈答品には熨斗をかけるのが一般的です。熨斗とは熨斗紙の右上に印刷されてある紙を折りたたんだような細長いモノです。
熨斗とは元来、伸ばして乾燥させた鮑(あわび)のことで、その名の通り「熨斗鮑(のしあわび)」と呼ばれていました。
大昔から神事に欠かせないものといえば酒と肴。大切な神事の際に、先人は神様をもてなすため、最上級の酒と肴を用意しました。海に囲まれた日本で一番上等な肴として選ばれたのが鮑だったのです。
美味しく保存もきいて長寿薬ともいわれていた熨斗鮑は、神様へのお供え物から、晴の日の宴の肴として定着していきます。それが熨斗鮑となり、今では贈答品に添える真心の象徴として、紙に印刷されるようになったのです。
日本書紀を見ると、その頃にはすでに熨斗鮑が伊勢神宮に献上されていたことが記されています。熨斗に込められているのは、神様に喜んでもらおうと考えた日本のおもてなしの心。大昔からの伝統が日常にさりげなく残されているのを見るにつけ、日本文化の奥行きと先人からの連綿とした繋がりを感じさせられます。