春一番は命がけの漁師言葉

川合玉堂 – 出船

「春一番」とは、春の初めに吹く強烈な南風のことをいいます。

春一番の語源説はいくつかあります。
石川県能登地方や三重県志摩地方では、昔から漁師言葉として、春の南風を「春一」と呼んでいました。
1859年2月13日、長崎県五島沖で南風にあおられて漁船が転覆し、53人の死者を出すという大惨事がありました。この漁が盛んな地域でも春の突風を「春一」と呼んでいたそうです。

漁師言葉であった「春一」が一般にも知られるようになったのは、1963年2月15日の朝日新聞によります。この日の記事に「春一番」という言葉が掲載され、それから急速にマスコミで使われるようになり、一般に広まっていったそうです。この日を記念して、2月15日は春一番名附けの日」に制定されています。

淡路島の五色浜の漁師は、春の南東の風が危険だと言います。島の西海岸に位置する五色浜。漁師が海へ出ると、南東には陸が見えます。陸から吹いてくる春の南東風は、強い雨を伴う突風となって船を襲うのだそうです。

「波は高いし雨は降る、恐ろしい風や。」と地元の年長の漁師は言います。

けれども、その恐ろしい風が最近はあまり吹かなくなったとも言います。風は吹くけれど昔のようにはっきりと強い風ではないのだそうです。

ここ数十年で気候がかなり変わってしまったと言われています。気温の極端な上昇や下降、異常な積雪、集中豪雨などで私たちはそれを感じ取っていますが、漁師は風の動きで随分前から環境変化を察知しています。

命がけで自然と向き合う人から聞く話は真に迫り、自然の怖さと付き合い方を教えられます。

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