炊煙の和歌
天皇誕生日は今上天皇の誕生を祝う国民の休日です。昭和23年までは天長節(てんちょうせつ)と呼ばれていました。日本の古い記録では、775年に光仁天皇の誕生日をお祝いしたことが文献に残されています。
日本の天皇は世界で一番古い皇族ですが、昔から他国の古代王族にはあまり見られない特徴があります。それは「皇室は民とともにある」という考えです。
先日の「十七条憲法」にも見られるように、諸外国が専制支配で統治をしていた時代から「独断すべからず」と和の精神を基本においてきた日本。その精神は古くは仁徳天皇(4世紀末から5世紀前半)の和歌にも見られます。
高き屋に のぼりて見れば煙立つ
民のかまどは にぎはひにけり
仁徳天皇
ある日、仁徳天皇が高殿に登って国を見渡すと、家々の竃(かまど)から立ち上るはずの煙がどこにも見られませんでした。これは民が困窮しているからに違いないと考えた仁徳天皇は、それから3年間税金と賦役を免除することに。それと同時に天皇自らも倹約に努め、家がボロボロになってもそのままにしていました。
3年後、仁徳天皇が再び高殿に登って国を見渡すと、今度はあちらこちらから煙が登っているのが見えます。その様子を見て安堵して詠んだ歌が、有名な「炊煙」の和歌です。