鵜飼の魅力/その2

鵜(う)は黒い体をした水鳥で、水中に潜って魚を獲ります。丸呑みした魚を吐き出す習性があることから、安産の霊鳥とされています。

日本書紀によると、豊玉姫が出産するための産屋の屋根に鵜(鸕)の羽を使いましたが、完成前に生まれてきてしまいました。屋根を葺き合わせないうちに生まれてきたので、その子を「鸕鶿草葺不合尊(ウガヤフキアエズノミコト)」と名付けます。ウガヤフキアエズノミコトの子供が初代天皇=神武天皇となります。ここでは鵜は「生」の象徴として扱われているように見えます。

次に古事記を見ると、神武天皇が吉野河で魚を獲っていた人に「あなたは誰か」と尋ねると、「私は国つ神で、名は贄持之子(にえもつのこ)と申します」と答えたと記されています。これは鵜飼の祖先にあたります。
ここで登場する「贄持之子」の「贄」はイケニエの贄。生き物を神へお供えする者であり、イケニエには「死」の影が見られます。

鵜には「生と死」という両極が象徴として浮かび上がってくるのです。

漁業としての役割はとっくになくなったというのに、いまだ観光名物として神事として生き残り、根強い人気のある鵜飼には、その迫力や幻想的な世界観だけでは説明できない不思議な魅力があります。生と死を同時に感じさせられるからでしょうか。

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