玉虫の色

玉虫はきらめく緑色に金や紫、藍や赤色の光の筋が美しい、まさに宝玉のような甲虫です。たまに見かけるとまるで宝物を発見したかのようなラッキー感が味わえるレアな昆虫。幸運の吉兆として「吉丁虫」とも呼ばれています。

その美しさに人は昔から色々な思いを込めてきました。玉虫の羽を箪笥に入れておくと衣装が増える、化粧箱に入れておくと愛されるなど、玉虫にはラッキーアイテム的な要素が伺えます。

美術品として有名なのは、法隆寺の玉虫厨子です。厨子とは仏像等を納める入れ物のこと。玉虫厨子は宮殿のような形をしており、全体に美しい細やかな細工が成された飛鳥時代の作品で、国宝に指定されています。

特長は何と言ってもその名の由来となった玉虫細工です。宮殿の入り口や柱などに玉虫の羽を張り込むことで、美しく幻想的な雰囲気を作り出しています。経年により現在では玉虫の羽のほとんどが失われていますが、名宝中の名宝として今も法隆寺に展示されています。

そんなきらびやかで美しいエピソードのある玉虫ですが、一筋縄ではいかないような側面もあります。
玉虫の美しい色は、光の反射具合によって色が変化します。見方によっていかようにも変わることから、どのようにも解釈できる都合のいいものという意味合いで「玉虫色の決着」「玉虫色の答弁」などと言ったりもします。ニュースなどで使われる政治用語です。

ラッキーアイテムであり、美術工芸品の美しい素材であり、いかようにも相手に沿う都合の良さ(政治的手腕)にも例えられる。見る角度によって様々な「色」を見せてくれる虫です。

SHARE
  • URLをコピーしました!
目次