筍流し
食用の竹には孟宗竹、淡竹(はちく)、真竹(まだけ)などが挙げられます。最も美味とされるのは孟宗竹の筍で春に土から顔を出します。淡竹と真竹はやや遅れて5月中、下旬頃から。風味の良さとコリコリした食感から、通に好まれる筍です。
「筍流し」とは筍が生える頃に吹く雨気を含んだ南風のこと。「流し」は湿った南風を表し、筍流し以外にも、木ノ芽流し、茅花(つばな)流しなどといった言葉があります。
「筍流し」は駿河・伊豆地方の漁師言葉、「木ノ芽流し」は木の芽が出るころに吹く風、「茅花流し」は茅花の穂がほぐれてわた状になる頃の風のこと。初夏の雨を呼ぶ南風は、土地土地の自然の捉え方によって色々な呼ばれかたをしています。
曇り空の下、ほんの少し肌寒さもある南風。その湿り気のある風に誘われて淡竹の細い頭が地面からすっと伸びる様は、季節がまた一つ変わったことを知らせてくれているようにも見えます。