雨の情景

梅雨は南方沖にできる梅雨前線により生じる雨季の一種で、通常は6月頃から1ヶ月〜1ヶ月半ほど続きます。

じめじめとして憂鬱な季節というイメージがある梅雨。しかしながら雨が多い地域では、憂いを含んだ雨の情緒を楽しむ、という感性も育まれてきました。宋代の詩人・蘇軾(そしょく)による西湖の漢詩は、しっとりとした水墨画のような情景を浮かび上がらせ、古くから日本人にも親しまれています。

湖上に飲す初晴(はじめはれ)後に雨ふる
水光瀲灔(れんえん)として晴れてまさに好し
山色空濛(くうもう)として雨もまた奇なり
西湖を把(とり)て西子(せいし)に比せんと欲すれば
淡粧濃抹(たんしょうのうまつ)すべて相よろし

蘇東坡


(訳)
西湖に舟を浮かべてお酒を呑んでいると、最初は晴れていたのに雨が降ってきた。水面がきらきらと輝いている晴れの日は綺麗だ。霧雨で山がしっとりと滲んでいる様子もまた素晴らしい。西湖を西子(西施・中国の伝説的美女)と比べれば、淡い化粧も濃い艶やかな化粧もどちらも似合っていて美しい。

瑞々しい緑に湿気を含んだ情景は、しっとりとした思いを馳せるのにちょうど良い舞台背景なのかもしれません。陰性の美しさは、雨だからこそ際立ちます。

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