花菖蒲(はなしょうぶ)の命

真っ直ぐに伸びた葉と茎、その先に優雅な花を咲かせる花菖蒲。開花時期は梅雨の頃で、花の色は白、桃、紫、青、黄など多数あり形も様々。凛とした立ち姿が美しく、五月後半から六月頃になると、各地にある名所は花菖蒲を鑑賞する人で賑わいをみせます。

天に向かってすっと伸びる姿。艶やかな花は柔らかさの中に緊張感があり、凛とした美しさに魅せられます。花を咲かせるのはわずか三日の儚い花です。

いづれの花か散らで残るべき。散るゆえによりて、咲く頃あればめづらしきなり。

世阿弥「風姿花伝」より

散ること=死があるからこそ、咲く=生の美しさがあります。現代はとかく明るい面だけをクローズアップし、負や陰の面を見せないように、感じさせないようにする傾向があるような気がします。今を生きる私達は、死について無意識に目を背ける(あるいは背けさせられている)あまり、生きることをあまりにもないがしろにしていないか、と思ってしまいます。生と死は同じもの。花菖蒲のような凛とした生き方を考えると、背筋が伸びる思いです。

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