ゆかた/その1

夏の着物として定着している浴衣(ゆかた)。花火大会や夏祭り、ちょっとしたお出かけなどで着られる方も多いのではないでしょうか。

そんな浴衣の文字を見てみると、「ゆかた」と読めるような漢字ではありませんが、なぜゆかたと読ませるようになったのでしょうか。その語源は古く、平安時代にまで遡ります。

浴(ゆあみ)して着る衣も、俗にゆかたというのは、同じ物語(栄華物語:平安後期の書物)、玉のかざりの巻に、御ゆかたびらとある、これなり。

本居宣長「たまかつま」より

つまり、平安時代に入浴の際に着られていた「湯帷子(ゆかたびら)」が元になり、本居宣長が生きた江戸時代の頃には浴衣(ゆかた)になっていたというのです。

昔のお風呂は現在のようなお湯に浸かるスタイルではなく、蒸し風呂でした。入浴の際はゆかたびらを着たまま蒸し風呂に入るのですが、衣が水蒸気の熱から肌を守ったり、汗を吸い取ったりという役目を果たしていました。

江戸時代になるとお風呂は裸で入るようになり、浴衣は入浴前後のバスローブ的な役割に変化します。男性はお風呂上がりに浴衣を着て涼み、女性は素肌に浴衣をひっかけて帯は締めずにそのまま髪や肌のお手入れをしていたようです。

浴衣は現在のような夏のお洒落着ではなく、あくまでお風呂用の着物だったのですが、江戸後期になると浴衣の扱いに変化がでてきます。

(続く)

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