障子

上村松園 – 晩秋

障子は冬の季語です。けれども障子自体は年中見られるため、冬だと言われてもピンときません。しかし、かつて障子は冬には欠かせない防寒建具だったのです。

昔は暑い夏には建具を全部取り払って全開にしていました。あまりにも開放的で気になる場所には簾などを下げて、風の通りをよくしていました。秋になって寒くなると、取り外していた板戸や襖を元の場所に取り付けます。これらの建具が冷たい冬の風を防ぐ防寒の役割をしていたのです。夏は蒸し暑く、冬は寒い日本の気候に合わせて考えられた住まいの構造でした。

しかしながら板戸や襖で家を囲ってしまうと、昼間でも真っ暗になってしまいます。寒いのはイヤだけど暗いのは困る。そこで考え出されたのが、木枠に和紙を貼った障子です。
和紙が外の明かりを取り込んで、防寒もできる、寒くて暗い冬のイメージを見事に打ち破った障子は、画期的な発明でした。また、和紙は外の雪で反射したきつい光をうまく遮って光を取り込んでくれるため、冬の建具兼明かりとりには最適な素材だったのです。

明治時代には、障子の真ん中の方にガラスをはめ込んだ「雪見障子」も発明されました。障子をわざわざ開けなくても、外の庭に降り積もった雪が見られるという粋な障子です。

現代は年中快適に過ごせるようになった反面、障子がもたらしてくれる風情はなくなってしまいました。暖房のきいた明るい高気密・高断熱素材の住宅では、いくら障子があっても何かが違うような気がします。冬の障子の風情を楽しむには、やはり「寒さ」と「薄暗さ」は必須なのでしょうか。

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