自分の鼻はどこにあるのか

田中保/窓辺の猫

12月9日は文豪・夏目漱石の忌日です。
夏目漱石の代表作の一つである「我輩は猫である」は、飼い猫の視点から人間の滑稽な様を描いた物語です。飼われているにも関わらず名前をつけてもらっていないという、雑な扱いを受ける猫。その猫は、人間たちが困ったり笑ったりしている様子を見て、こう言います。

人間にせよ、動物にせよ、己(おのれ)を知るのは生涯の大事である。己を知る事が出来さえすれば人間も人間として猫より尊敬を受けてよろしい。(中略)しかし自分で自分の鼻の高さが分らないと同じように、自己の何物かはなかなか見当がつき悪(に)くいと見えて(中略)おれの鼻はどこにあるか教えてくれ、教えてくれと騒ぎ立てている。

いつでも自分の一番近くにぴったりと付いている鼻のごとく、探しているものや求める答えも、一番近くて一番高いところにあるそうです。名前のない猫が教えてくれます。

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