悲しみ華やぐ

3月1日は大正・昭和初期の小説家・岡本かの子の誕生日です。

画家・岡本太郎の母でもあるかの子は、一般人とはかけ離れた生活をしていました。
当時は奇抜だったボブヘア(断髪)に濃いメイクのモダンガール。料理や裁縫、お茶、生け花など、当時は出来て当たり前だった女性としてのたしなみや家庭的なことはできませんでした。

漫画家である夫・岡本一平と結婚する時、かの子の父は「(家庭的なことは何もできないから)差し上げるような娘ではない。この娘は普通の子じゃない。」というような事を一平に言ったそうです。

世間一般の女性ができることができず、仕事と恋に没頭し、夫の他に若い恋人二人と同居するという一般的でない生活は、周囲の人々から好奇の目で見られました。

世間から非難を浴びようとも、自分の生き方を貫いたかの子は、代表作『老妓抄』の最後に和歌を置いています。


年々にわが悲しみは深くして
いよよ華やぐいのちなりけり

深く深く暗闇に沈んだ悲しみと、光り輝くような華やかな生の喜び。光が強いほどに影もまた濃くなりますが、逆もしかり。相反するものが同じ場にあって、その振れ幅が大きいほどに熱量も大きくなる。どちらも受け入れた時、一つに昇華する。
かの子自身の生き方を表したような和歌です。

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