古代のオンザロック

日本酒は温度によって味が変わります。その変化を楽しむのも日本酒の醍醐味。熱燗、ぬる燗、涼冷え、雪冷え、など温度帯によって名前がつけられています。

今はお酒の楽しみ方が多岐にわたり、華やかな吟醸系が流行っていることもあってか、当たり前のように冷やして呑んだりしますが、冷蔵庫が普及する以前は夏でも燗で呑んでいました。もともと日本酒は温めて呑むのが普通だったのです。

そんな日本酒ですが、奈良時代に編纂された日本書紀に、氷を入れて呑んでいたことが記されています。

(氷室の氷は)既に夏月を経るにきえず。其の用ふこと、即ち熱き月に当りて、水酒に漬して用ふ。

訳)氷室(野中に掘られた冷蔵用の穴)に入れられた氷は、夏になっても消えません。暑い季節に水酒にひたして使います。
日本書紀 巻第十一より

日本最古のオンザロックは夏でも溶けない氷室の氷。暑い時期の最高の贅沢でした。

最後に、日本書紀と同じ時代にできた万葉集からお酒の名句を一つ。

賢(さか)しみと 物言ふよりは
酒呑みて 酔哭(あひなき)するし 益(まさ)りたるらし


訳)賢いふりして説教たれるよりは酒を呑んで酔っぱらっているほうがマシである
大伴旅人

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