泥中の蓮
暑さが日毎に増してくる7月頃に、蓮は花を咲かせます。蓮はきれいな水よりも、濁った泥の方が花がきれいに咲くといわれています。
仏典の維摩経(ゆいまぎょう)には、有名な「泥中の蓮」の話があります。菩薩の弟子が「悟りを開くにはどうしたらいいですか?」と尋ねたところ、菩薩はこう答えました。
「あらゆる煩悩が悟りのための出発点となります。例えば、美しい蓮の花は高原には咲かず、低い泥だらけの湿地帯に咲くようなものです。」
悟りというと何だか難しそうに思ってしまいますが、より強く楽しくエネルギッシュに生きるには、と考えれば合点がいきそうです。
痛みや悩みを知らないままでは薄っぺらく、逆にそんな状況を乗り越えていけばいくほど、人間的に厚みも増して魅力的になっていきます。
現代はなるべく失敗しないように、損をしないように、つらい経験をしないように、と考えすぎる傾向があるような気がします。自分がやりたい事を貫くためには、泥を飲むことは必要不可欠。良い面も悪い面も「清濁併せ呑む」覚悟があってこそ、良い面が光り輝いてきます。望みを叶えたいけど面倒なことはしたくないといった、いいとこ取りはありえません。
泥を飲み込んだからこそ、美しい花を咲かせることができる。蓮は大輪の花をもって教えてくれます。