洗練の極み
10月30日は初恋の日。1896年のこの日に、島崎藤村が初恋の詩を発表したことがきっかけとなり制定されました。
日本の和歌の真髄は恋の歌。中でも新古今和歌集に採録された、恋心の芽生えを詠んだ式子内親王の歌は秀逸です。
しるべせよ跡なき波に漕ぐ舟の
行方も知らぬ八重の潮風
式子内親王
訳)
舟の跡も残らない、どこへ行くかもわからない舟に、八重の潮風が吹きぬけていきます。
海上を漂う舟を、先行きのわからない不安定な恋心に例えた歌です。恋も男女も感傷も、言葉としては出てきません。たゆたう舟だけで恋心を表した、非常に洗練された象徴歌です。