春の寝覚めのうつつで聞けば
春眠不覚暁
処処聞啼鳥
夜来風雨声
花落知多少
春眠(しゅんみん)暁(あかつき)を覚えず
処処啼鳥(しょしょていちょう)を聞く
夜来風雨(やらいふうう)の声
花落つること知る多少
孟浩然/春暁より
あたたかい春は四季の中でも一番寝心地がよく、朝になってもなかなか寝床から離れられずうつらうつらとしてしまう。そんな「春眠暁を覚えず」の元ネタとなった漢詩が春暁です。
この春暁を小説家の井伏鱒二は日本語で次のように訳しています。
春の寝覚めのうつつで聞けば
鳥の鳴く音で目が覚めました
夜の嵐に雨混じり
散った木の花いかほどばかり
井伏鱒二
「いかほどばかり」と気にはしつつもどうでもいいようなのどかな朝。井伏鱒二の訳にかかると、そんなゆるい幸せを満喫するような春の一場面が浮かび上がってくるようです。